展示記録

2010年6月4日〜13日

蓮池もも展

蓮池もも(はすいけもも)
■1983年新潟市生まれ。
2006年より作品発表。



変わりつつある大地と少女

大倉宏(美術評論家)

 
 ゆるやかに起伏する、果てのないその大地を女ははだしで歩いた。
 木や森や遊牧民のテントや光る岩を見、獣の頭の、鳥の腕の男に出会った。もうひとりの女と走り、女たちと踊った。
 蓮池ももがこの4年、描いてきた平原では、こうしてさまざまなことが起こった。少しずつ、次々と。豊かなドラマを包みながら、けれどそこには大地そのもののような沈黙が、孤独の息が、そびえていた。
 描くという孤独、見えないその壁の中で女=画家はおのれの生きる脚力を解き、実人生と同等の事件やめぐりあいを体験し、呼吸したのだ。そして絵を見る私たちは、実人生では放てなかった心の中の生き物たちが、その平原に静かにかけ下りていくのを見た。
 昨年から大地が変ぼうを始めた。地殻の深いところで、高貴な孤独の世界に侵入し、ふみ破ろうとする力があるかのように。
 荒れる海、そこに突き出すやりのような岩。4年前には想像できなかったような粗い筆跡で描かれる木々、ざわめく草。山道。女を導き、女に導かれる白い女や、鳥の登場。見ると少女だった女は、もう少女ではなく、かつてなかったにじむような朱や黄が、絵にしみている。
 絵を揺らす力。その力に応える絵の力。孤独の城壁のなかで根を張り、枝を広げてきた生命が、沈黙の世界から深い声を伐り出そうとするかのよう。

2010年6月1日 新潟日報 掲載